REFOLIO

2026/10/31 15:43

花の色や葉の形、茎の伸び方、花が終わったあとの実。植物図譜には、一株を知るための情報が、一枚の紙面に収められています。


今回は、REFOLIOで紹介している植物図版の中から、スウェーデンの植物学者C. A. M. リンドマンによる『Bilder ur Nordens Flora』を取り上げます。北欧の植物を描いたこの図譜は、1901〜1905年に初版が刊行され、その後も改訂が重ねられました。原典の序文肖像出典:Wikimedia Commons
中表紙出典:Internet Archive




古い図鑑を、新しい知識で読み直す

この本の出発点には、19世紀初めから刊行されたパルムストルッフらの『Svensk Botanik』がありました。リンドマンの仕事は、その植物図譜を新しい時代の読者へ届け直すことでした。

ただし、古い図をそのまま再版したわけではありません。説明文を当時の植物学の知識に合わせて書き直し、図にも修正を加え、花や果実、種子などの細部を補っていきました。

紙面に添えられた小さな部分図には、植物を見分けるための意味があります。美しさを眺めるだけでなく、姿の違いを読み取る。図譜は、その両方を支える本でした。図譜の制作史に関する研究


色を、より多くの読者へ

印刷方法にも変化がありました。前身の図譜は銅版に手彩色を施すものでしたが、リンドマンの図譜では石版による色刷りが用いられました。一枚ずつ彩色する方法から、印刷で色を再現する方法へ。制作費を抑え、植物の姿をより広く届けるための工夫でもありました。

今回紹介する二点については、同じ本の購入時資料に1926年印刷の石版画と記載されています。本の初刊年と、手元にある一葉が印刷された年は異なります。

紙と色材にも、時代の事情がある

1917年に刊行が始まった改訂版の序文には、費用の上昇や、紙・色材の調達の難しさも記されています。そのなかでも生きた植物を参照して図の見直しが進められ、新たに144枚の図版が加えられました。リンドマンの序文


穏やかに見える植物の絵の背景には、観察し、描き、印刷し、本として届ける仕事があります。全体の姿を眺めたあとで、小さな線や部分図にも目を近づけてみると、この本の別の面が見えてきます。

REFOLIOで出会える、この図譜の一葉

図版171|セイヨウオキナグサ

紫の花と細かく切れ込んだ葉、羽毛のように広がる果実。花の盛りだけでなく、その先の姿まで描かれた一枚です。


図版328|シロツメクサ・タチオランダゲンゲ

二種類のクローバーを並べた図版。三つ葉や丸い花の集まりに加え、茎の伸び方や小さな部分図にも、それぞれの特徴が表れています。